ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

木のやうな音してラガーぶつかりぬ

木のやうな音してラガーぶつかりぬ

木暮陶句郎

 私の父はラグビーが好きで、私も父の影響でラグビーが好きになりました。特に平尾がいた頃の神戸製鋼が大好きで、いつも父とテレビを観て興奮していました。また、大学で東京に来てから結婚するまでの10年くらいでしょうか、毎年、1月2日の大学選手権の準決勝を秩父宮ラグビー場で父と観戦することが習慣となっていました。

 初めてラグビーを観戦したとき、ラガーらのぶつかり合う音が強く心に残りました。ぶちっ、ぶちっ、と鈍い音が離れた観客席まで聞こえてくるのです。肉体のぶつかる音って、こんなに鈍い音なんだ、と思いました。

 この句は、「木のやうな音」と表現しています。森に住んで陶芸を営んでいる作者ですから、木の枝が落ちる音や木が風でぶつかり合う音のように感じたようです。他のスポーツではなかなか肉体同士が激しくぶつかり合うことはありません。道具が介在しない、肉体のみのぶつかり合いは生あるものから生まれる自然な音で、そこには人工音はまじりません。ラグビーは、素朴で愚直なスポーツだとつくづく思います。

 サッカーや野球も好きですが、私は、泥臭いラグビーが一番好きなスポーツです。ちなみにラグビーのワールドカップは、来年(2027年)10月開催です。    (2026.01.25 【22】)

 

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。