ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

初富士を正面いまが真正面

初富士を正面いまが真正面

鷹羽狩行

 車か電車の移動中、初富士が現れた景を想像しました。「おお、正面に出てきた」「いやいや、今こそが真正面!」といった移動の様子が伝わります。「正面」に現れた驚きと喜びが、「真正面」にきたことで感激が最高潮に達しました。物理的な移動、時間の移動、心の移動。それらを「を」「いまが」の漢字以外の措辞で表したところが実に巧みです。

 「初富士」には、新年のめでたさと明るさがあります。高く、美しいその晴れ姿に今年も夢に向かって歩んでいこうという気持ちにさせられます。

 この連休、箱根に行きました。大涌谷から撮った初富士の写真を掲げます(新年の富士山ではありませんが)。大湧谷から芦ノ湖までロープウェイで往復しました。空中から大湧谷の噴煙、仙石原、芦ノ湖を堪能。ロープウェイは移動手段というより、「大湧谷」の火山活動をハイライトとした観光手段という感じ。富士山がゆったりと見守ってくれました。 

 作者は鷹羽狩行、句は『十六夜』所収。技あり!と唸らせつつ、心にも響く句をつくる作者です。                                      (2026.01.14【20】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。