ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

日本がここに集る初詣

日本がここに集る初詣

山口誓子

 一年の始まりにいつも口にする句。日本中、よくもこれだけの人が集まるものと毎年感心します。実家にいた頃、千葉の成田山が近かったのですが、あの人ごみのすごさにとても行く気にはなれませんでした。高市首相の国会での発言で、「存立危機事態」の問題が浮き彫りになりました。今年はこれまで以上に日本人としての自覚を促されているように感じます。

 シンガポールでは、8月9日が「ナショナルデー(独立の日)」。在住中、私もパレードや花火を観に行きました。「ナショナルデー」では毎年テーマ曲が作られ、過去の曲も流されます。1986年の「カウントオンミー シンガポール」は、よきメロディーとともに印象に残る曲でした。「together」「We can achieve」といった歌詞に団結を促す国の熱い思いが滲み出ていました。

 日本ではことさら、「together」などと叫ぶ必要はありませんが、華人、マレー人、インド人などが住む多民族国家のシンガポールでは、こういう機会に「シンガポーリアン」であることを徹底します。だから、この日は愛国心が最も高揚する一日となるのです。国を挙げて盛り上がる「ナショナルデー」。私は、少し羨ましく感じました。

 日本では、シンガポールの「ナショナルデー」に当たる日はあえて言うと、正月の「初詣」なのかもしれません。たしかに「日本がここに集る」のですから。    (2026.01.03 【17】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。