冬空へ出てはつきりと蚊のかたち
岸本尚毅
蚊が「冬空」へ出た瞬間をとらえた句。「冬空」という大きな空間がちっぽけな蚊をしっかりとキャッチしました。まさにキャッチしたという感じがします。
小さくて、存在感すら乏しい蚊ですが、青々とした「冬空」にそのかたちをあらわにしています。大(「冬空」)が小(「蚊」)を逃さず、大小の対比が鮮やかです。また、「かたち」という措辞が巧みで、蚊の輪郭がくっきりと見えてくるようです。冬の蚊ですから、弱々しいはずですが、「冬空」という大景をバックにしているので、その存在感が明確に伝わってきます。また、カ音の硬質な音の連なりから冬の冷たい空気感が伝わってきます。
この句は、ちっぽけな命なのに妙に蚊の存在感があり、生命力のたくましさを感じさせてくれます。作者は岸本尚毅さんで、第一句集『鶏頭』所収の句。 (2026.01.01 【16】)