ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

野遊びの終り太平洋に出づ

野遊びの終り太平洋に出づ

大串章

 日も傾いてきたので、野遊びを終え、仲間と歩き出したのでしょう。しばらくすると眼前に太平洋がひらけました。予期しなかった景に、その場の驚きと高揚感が伝わってきます。野遊びの付け足しではなく、思いがけず、野遊びのフィナーレを飾ってくれました。それまでの仲間との野遊びの楽しい時間も想像できます。伸び伸びとした景と作者の明るくおおらかな抒情が響き合い、とても気持ちのいい句です。

 作者は「百鳥」主宰の大串章さん。昭和六十一年作、『百鳥』所収の句。「青大将太平洋に垂れ下がり」「水平線大きな露と思ひけり」「今年竹空をたのしみはじめけり」など伸びやかな句風はとても魅力的です。また、景を大胆にシンプルに切り取っているので、歯切れがよく、作者の気持ちがまっすぐに伝わってきます。明るく大きな抒情、そして、抒情がすきっと俳句の器に収まっている心地よさ。見習いたい俳句の姿です。                             (2025.12.20 【14】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。