ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

スワヒリ語らし風邪薬欲しいらし

スワヒリ語らし風邪薬欲しいらし

加藤静夫

 実に俳諧味があり、おもしろい!人は風邪になると頭は朦朧とし、しゃべることも億劫になります。何か言葉を発しているが、何を言っているのか作者は理解できません。その人は、外国籍の方なのか日本人なのかわかりませんが、いずれにせよ呟いた内容がよくわからず、「スワヒリ語のようだ」と作者は感じているのです。また、しんどそうだから、きっと「風邪薬」でも欲しいのだろうと予想しています。「スワヒリ語」という言葉が滑稽ですが、状況を実にうまく表現しています。

 また、「らし」のリフレインがリズミカルでどこか楽しいです。本人は苦しんでいるのでしょうが、読者はまあ大丈夫だろうと安心してこの句を鑑賞することができます。

 作者は、「鷹」の加藤静夫さん。『中略』(2016年刊)所収の句。この作者の句は俳諧味が絶妙で、いつも堪能させてくれます。「水着なんだか下着なんだか平和なんだか」「佃島ギター教室西日射す」「玄関の鍵掛けて食ふバナナかな」「日本はいい国使ひ捨て懐炉」など。           (2025.12.16 【13】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。