ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

絵心や真上から見る鏡餅

絵心や真上から見る鏡餅

本多遊子

 いきなり「絵心や」とぶつけられるとはっとします。「絵心」とは絵を見る感性と解しますが、「真上から見る」と続くので、「鏡餅」を見る角度を変えながら、構図やその姿を絵として捉えようとする意図を感じます。作者は「閨」創刊同人の本多遊子さん、句は『Qを打つ』(2020年12月刊)所収。

 「鏡餅」は通常正面から見ることが多いため、「真上から」といわれると、はて、どんな姿になるのかと考えさせられます。上から俯瞰的に眺めるので、抽象的、象徴的な見方が生まれるでしょうか。そもそも「鏡餅」は心臓の形を模したともいわれ、それを食べることで生命力を新たにしようとするもの。また、三種の神器の一つ、八咫鏡(やたのかがみ)に擬したともいわれます。

 真上からの眺めは、「鏡餅」が丸餅の大小二つと橙で構成されていますので、幾何学的な同心円構造、小宇宙、三段式ロケット、古代の銅鏡などのイメージが浮かびます。ふだんの視点を変えてみる行為は、固定観念を崩します。たしかに「絵心」を呼び起こします。俳句を詠む上でも視点を変える行為は大切です。この句を読んで、「絵心」という感性を大切にしたいと思いました。   (2025.12.11 【11】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。