ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

落葉道二度聞きとれずもう聞かず

落葉道二度聞きとれずもう聞かず

藤井あかり

 作者は藤井あかりさん。句集『封緘』(2015年刊)所収。落葉を踏む音が話をする声を遮るのでしょうか。作者は二度までは聞き取ろうとしたのですが、うまく聞き取れず、そこで諦めます。三度目は求めません。これ以上距離を縮めるほど二人の関係性を詰める気はないように感じます。あるいは、この句集全体に流れる「言葉」への信頼感の欠如が、それ以上のコミュニケーションを求めないのかもしれません。

 集中に「言葉より蛇の髯の実が今は要る」という句があります。作者は、「言葉」のような抽象よりも実在する「蛇の髯の実(竜の玉)」の具体を求めます。抽象を突き詰めても仕方がないという諦めを感じます。

 助詞を排し、否定を繰り返す文体。「二度」と「もう」による時間の切断。この句には強い諦めが表出されています。声が吸い込まれていく落葉道の情景がそうした作者の心情と溶け合い、心の空洞を象徴するかのようです。                              (2025.12.09 【10】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。