低予算映画のような浜を蟹
福田若之
どこか寂しく、わびしく、孤独で、青春性を感じさせる句。情景も目に見えるようで、「低予算映画」という言葉が想像を膨らませます。とても現場感覚があって、今を生きている感じがします。作者の福田若之さんは1991年生まれ。現代仮名遣い、口語体が句の内容や表現にピタリとはまります。
この作者の俳句にはじめて出合ったのは、「ヒヤシンスしあわせがどうしても要る」という句でした。東日本大震災の直後に発表された句ですが、震災後でなくとも切実さが伝わってきます。若い二人の生活風景や会話が想像され、つぶやきをそのまま口語で表現したところが実にリアルです。この句も現場感覚や今を生きている感じが強烈にあります。
他に、「キオスクが夏の記憶で今もある」「子どもたちが幾何学をする初夏の路地」といったノスタルジアがそそられる句もあります。「猫ですしじゃあ何でちまき食ってんのって話だわな」という口語体だからこその俳句もあります。「話だわな」の着地が見事としかいいようがありません。この作者の現場感覚と文体に私は大いに魅せられ、心が抉られます。 (2025.12.04 【9】)