ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

団扇の子はうばうに風送りけり

団扇の子はうばうに風送りけり

千野千佳

 今年(第71回)の角川俳句賞の受賞作品から。作者は「蒼海」の千野千佳さん。五十句すべてがすっと私の心に響きました。選者の評にあるようにどの句もおもしろ味がありました。わかりやすく、押しつけがましくもないので、句が素直に入ってきました。取り上げた句もそんな一句です。団扇を持った子は、父にも母にもじじにもばばにも風を送ろうと一生懸命です。子に対する作者の視線はやさしく、愛おしさに溢れています。「受賞のことば」に「生活のやる気のあるこどもと過ごすことで、わたしの生活も変化に富んだ、色のあるものになりました」とあります。他にもそう感じさせる句がたくさんありました。「たてよこに舐め上げてゆく千歳飴」「双六の要所要所のセロテープ」「虫売にこどもたやすく近づきぬ」など。「撫でらるるまへにふくろふ目を細め」も読みようによっては子を詠んだ句の比喩ともとれます。                                   (2025.11.13 【3】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。