ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

てのひらをすべらせたたむ花衣

てのひらをすべらせたたむ花衣

西宮舞

「花衣」とは、花見に行くときに女性が着る晴着のことです。杉田久女の句に「花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ」という有名な句があります。かなり激しい心模様が伝わってくる句ですが、この句は、静かな心模様を感じさせてくれます。

 花見を終えたあとでしょうか。何気ない仕草の中に作者の心の華やぎが感じられます。ただ畳んだのではありません。「すべらせ」という措辞により、「花衣」に対する肌触りまでが伝わってきます。また、花見の余韻が残り、静かに味わっている作者の姿が見えてきます。

 上五中七をひらがなで表記しているのも心地よく、「花衣」の質感が伝わってきます。「花衣」を「すべらせ」ることで、「花衣」を奏でているようにも思え、美しい旋律が聞こえてくるようです。

 今年もそろそろ寒さが緩和されるでしょうか。四月を待たず、桜の季節を迎えることになるかもしれません。あとひと月です。  (2026.02.20 【26】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。