ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

電文のみじかくつよし蕗のたう

電文のみじかくつよし蕗のたう

田中裕明

 メールやSNSの普及で、最近は電報をあまり見ませんが、昔は受験の合格の知らせなど、電報で受け取ったものです。海外にいたときは、結婚の祝電や弔電を電報で送ったこともあります。

 電文は短くて力強いですが、この句の場合、作者は電報を受け取って大いに励まされたことが伝わってきます。「蕗のたう」の季語が早春を迎え、これからチャレンジしていく作者にエールを送っているかのようです。俳句もそうですが、簡潔なことばはインパクトがあります。

 今はSNSがあるため、電報を活用することはあまりないですが、逆に、滅多に使わない分、電報を送ると効果はきっと大きいはずです。訃報などの悲しい内容よりも相手が受け取ったときに望外の喜びを感じてもらえるような内容がいいと思いました。

 こうして鑑賞文を書いているうちに、結婚して1年経ったとき、結婚記念日を忘れ、奥さんをひどく失望させたことを思い出しました。今年は電報でも送ってみようかとふと思いましたが、「何これ?金婚式でもないのにお金がもったいないでしょ!」と叱咤されそうです。あのときこそ、電報を打っていたらと思いますが、肝心の日にちを忘れていたのですからそれ以前の問題ですね。 (2026.02.15 【25】)

 

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。