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~「俳句」と「異文化」による出会い~

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エッセンス【グローバルの窓】(5) ~事件は現場で起きている~

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エッセンス【グローバルの窓】(5)  ~事件は現場で起きている~

 「北米部を見習え!」

 プリンタの事業部長から怒号が飛びました。初めてのプリンタ事業部との定例会議のことでした。我が欧州部は、部長、課長、主任、主担当、私(新入社員)の5人が雁首揃えて臨みましたが、完膚なきまで打ちのめされました。我が部長は、「こんな会議ならもう二度と出ぬ!」とキレて立ち去る始末。このあと、課長は「ようし、やってやろうじゃないか」と明るく我々を鼓舞しました。

 当時は、日本からU.K.の現地法人にプリンタを輸出し、各国の代理店経由で販売していました。課長は、こんなやり方ではだめだと言い、欧州で一番大きな市場のドイツに現地法人を設立し、自ら社長として赴任しました。

 私は、PCディーラーがどのようにプリンタを販売しているか実地調査することにしました。PCといえば、当時はIBMが主力。まず、全国のIBMのPCディーラー400社に電話調査をする一方、自らは主要都市の70社を飛び込み訪問しました。日本では、工場への生産手配や輸出手続きに追われてばかりでしたので、NECのプリンタが実際に店頭に置かれているのを見たときは胸が熱くりました。また、ディーラーの販売員から現場の最前線の状況を聴取するにつけ、「市場はここにあり!」との感を強くしました。

 ドイツへ出向した社長(元課長)からは、「お前自身の口からプリンタの事業部長に直接説明して来い」と命じられました。実際に市場の現場に立ったことで、「こうすれば売れるんだ」と熱意をもって説明することができました。「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」を身をもって経験した出来事でした。プリンタの事業部長から「北米部を見習え!」と言われることはもうありませんでした。          【第5話ご参照】

 

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。