ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

風花や天の粗相のうつくしく

風花や天の粗相のうつくしく

中原道夫

 風花は、冬の青空に舞う雪片のこと。風に舞い散る姿は冬青空に映えて、はかなくも美しいですが、その姿を「天の粗相」と捉えたところが実に見事です。「粗相」とは「便をもらすこと」です。「天の粗相」と言われると、神様がうっかりもらしてしまったおかしさがあります。

 俳句では、あまり「うつくしい」とか「たのしい」といった表現は成功しづらいのですが、この句は、「天の粗相」と組み合わせたことで、逆に「うつくしく」がぴたりとはまりました。下品な感じは微塵もなく、「風花」の美しい姿がありありと浮かんできます。詩として見事に句が昇華しています。

 作者は中原道夫さん。独特の視点と機知に富んだ句を詠まれ、表現もキャッチ―です。 俳諧のセンスのよさも感じられます。 風花の句では、他に「約束は確か北口風花す」という句があります。また、「白魚のさかなたること略しけり」「飛込の途中たましひ遅れけり」など読者の心を掴んで離さない名句もあります。 

      (2026.01.30【23】)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。