ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

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第47回 “I feel at home in places like this.” (こういうところはくつろげるね)

  • グローバルの窓(海外体験記)
第47回 “I feel at home in places like this.” (こういうところはくつろげるね)

上院議員とカラオケへ

  フィリピンの国会は上院、下院の二院制です。上院は24議席しかなく、任期は6年で、2期連続の就任は認められていません。だから、上院議員の地位は高く、私がエストラーダ大統領とのアポを取得できたのも、ある上院議員の方の力添えがあったからです。下院議員は最大292議席で、現在は214議席のようです。任期は3年です。

  第44回にも書きましたが、通産大臣とアポなしで会えたように、フィリピンの政治家は気さくかもしれません。というのは、政治家(下院議員)のお忍びにつきあい、一般の人なら誰でも行くようなカラオケ屋に私も一緒に行ったからです。どうしても庶民が行くカラオケ屋に行きたいというので、私の日本人の同僚がアレンジし、私も一緒に行きました。

  マニラの海岸沿いのロハス通りを少し入ったところにあるそのカラオケ屋は、こぢんまりとしていて、階段を上った二階にありました。天井には怪しげなミラーボールが回転し、4グループほどが入れば満杯になる規模のお店でした。そこは日本人が行くカラオケ屋ではなく、フィリピン人が行くカラオケ屋でしたので、私自身も初めてのお店でした。

 議員は、「こういうところに来たかった。肩肘張らなくていいからね。庶民がどんなところで日頃楽しんでいるか知りたいんだ」と言いました。まわりには2組ほどのお客がいましたが、誰も議員のことはわからないようです。

政治家とのつながり方

  数曲歌ったあと、議員は大体カラオケの感じがわかったようで、「なかなか楽しかった。カラオケいいね。こういうことはフィリピン人にはなかなか頼めないので、今日は助かりました。ありがとう」と言いました。この日の議員は表向きの顔とはちがう別人のようで、日本がもたらしたカラオケを体験したかったようです。

 どの国の議員もたまには普段の政治の世界から抜け出したいのでしょう。非公式に手助けすることは、政治家との関係を築くのに一番の近道だと思いました。大統領との面談をアレンジしてくれた上院議員とも、昔の先輩たちはこのようなプライベートのかたちで協力していたのかもしれないと思いました。フィリピンという国は、案外、政治家と気軽につながるチャンスがある土壌なのかもしれません。それも日本人だから信用もされ、一目置いてくれるように感じました。

 私のフィリピン在任中、ビジネス上でこの議員のお世話になることはありませんでしたが、我々の会社に対していい印象を持ってくれましたので、将来、大統領や大臣との面談のアポ取りなど私の後任者や後輩がどこかでつながることがあるかもしれません。フィリピンはそんなことがあり得る国のように感じます。

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。