第59回 “Let’s toast with a glass of wine!(ワインで乾杯しよう!)
- グローバルの窓(海外体験記)
イスラエルに進出?
海外のiモードは、オランダから始まり、台湾、ドイツ、フランス、ギリシャ、イタリア、スペインとビジネスを広げていきました。NTTドコモの海外投資戦略に呼応するかたちで展開していったのです。2004年頃にはイスラエルの話が持ち上がりました。当時のイスラエルは、外務省の危険レベルが「渡航中止勧告」だったと思います。危険な上にそれほど大きくない市場規模のイスラエルになぜ進出しないといけないのか私にはわかりませんでした。事業部長には、「これはさすがにビジネス的なメリットが薄いので、ドコモさんにはお断りしましょう」と進言しました。事業部長も納得し、その旨申し入れをしました。
しかし、数週間後、事業部長から、「一旦は断ったが、NTTドコモからイスラエル市場でも協力して欲しいと強く要請された。申し訳ないが従って欲しい。私も一緒にイスラエルに渡航するから」と言われました。そこまで言われたらやるしかありません。
5日間の契約交渉
とはいえ、すんなり進んだわけではなく、まず価格や売買条件の交渉をイスラエルのオペレーターと行う必要がありました。何度もメールでやり取りしながら、条件を詰めていきましたが、なかなか決着にまで至りません。直接会って交渉するしかないのですが、イスラエルに行くのは危険なので、日本に来てもらいました。2日ほど缶詰で議論しましたが、それでも埒があきません。結局、最後はお互い出張して、ミュンヘンのホテルで交渉しようということになりました。
技術、製品仕様、売買条件、保守条件など交渉項目は多岐にわたり、お互い、5、6名を派遣してのグループ交渉となりました。5日間ホテルに缶詰になって交渉しました。最初は3日ほどで終わるかと思っていましたが、相手はまったく妥協しません。朝の9時から夕方の6時まで、ひたすら契約交渉です。3日もするとさすがに疲れてきました。それは相手も同じだったはずです。保守条件に一番てこずったでしょうか。市場の危険性を鑑み、地場で保守体制を持つことは回避したかったので、製品交換とモジュールでのスペア支給で押し通しました。
5日目の午後4時頃、ようやく契約調印の目途がつきました。相手から「お互い議論を尽くし、ようやく契約が結べるレベルにまできた。これまでの対応、協力に敬意を表する。交渉はこれでおしまい。このあとはワインで乾杯しよう!」と提案がありました。へとへとの我々は「Good idea!」と発し、喜んで提案を受け入れました。こういう瞬間があるから仕事は楽しいとあらためて感じました。ワインのあとはお互い握手して別れました。
ローンチング
イスラエルのオペレーターがローンチング式典を開催するというので、事業部長と私でイスラエルに出張しました。何が起こるかわからないので、最大限警戒してのイスラエル入りでした。実際、エルサレムでは、ランチに訪れたレストランが、次の日にはテロにやられ、我々は一日違いで難を免れるような状況でした。
ローンチング式典は、古代ローマの遺跡(野外劇場)を舞台に行われました。レーザーショー、音楽とともに商品が紹介され、プロモーションプランが発表されました。式典は盛況のうちに終わりました。古代ローマの人はこのような式典に遺跡が利用されようとは想像もしなかったことでしょう。ミュンヘンでの5日間の缶詰の契約交渉があったからこそ、私はローンチング式典を満喫することができました。
iモードのベース開発費は回収済みだったこともあり、イスラエルでのビジネスは結果的に黒字となりました。契約交渉で苦労した甲斐がありました。また、テロにも遭遇せず、無事にビジネスを遂行できました。イスラエルが海外iモードビジネスの最後の進出市場となり、フィナーレを飾ることができました。
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