第17回 “New Japanese CEO has come in Italy !” イタリアでの新たな生活の始まり ~日本人社長を迎える~
- グローバルの窓(海外体験記)
イタリアのビジネスは、ディスクドライブ事業で立ち上がりました。その後、ディスクドライブ事業が急落したタイミングで携帯電話事業にFirst ComerとしてSIP社(当時のイタリア電信電話会社)に入り込むことができました。商品の魅力やプロモーションが奏功し、初年度から事業は軌道に乗りました。いずれの事業もバンカレというイタリア人が営業として活動しました。
そうした状況を踏まえ、イタリア会社は私がイタリアへ移るタイミングでドイツの子会社から日本本社の子会社に変わりました。バンカレがゼネラルマネジャーとしてイタリア会社のトップを勤めましたが、途中から日本人の社長が赴任することになりました。日本人社長をトップにバンカレがNO.2のゼネラルマネジャーとなり、私(企画)や経理、営業、人事のマネジャーがバンカレにレポートするという体制になりました。日本人は社長と私の二人でした。
社長は、最初は一人でイタリアに入り、奥様や家族は2か月後に到着されました。一人の生活が2か月ほどありましたので、時々我が家に社長をお呼びし、夕食を共にしました。
最初に社長が我が家を訪れた日、妻を紹介しました。そのとき、社長は妻に名刺を渡したのですが、それが見慣れぬ名刺だったのです。名前だけが書かれたシンプルな名刺でした。タイトルも何もありません。明らかに会社の名刺とは違うものでした。私は不思議に思い、「この名刺は何でしょうか。会社の名刺ではありませんが」と聞くと、社長は「これは私の個人の名刺です」と言います。「会社の名刺でもいいのに」と私が言うと、「いや、それは違う。奥さんは私とは仕事では何の関係もありません。上司部下の関係ではないのです。私は奥さんとは社長としてではなく、個人として接していきます」と言います。
日本の現地法人での日本人のつき合いにはいろんなパターンがありますが、最終的にはトップの方針に従うかたちになります。ドイツでは、定期的に日本人同士が家族ぐるみのつき合いをしていました。社員の家族もしっかり守る、というのがトップの考えで、より安全面を意識した発想でした。しかし、イタリアでは、ドイツとは180度違いました。
ドイツの経験しかない我々にとって、イタリアの社長の姿勢は驚きでした。社長が帰ったあと、妻は「名刺は社長のポリシーだね。公私をはっきり分けるんだね」と言いました。
社長はアメリカに出向していたとき、上司が単身赴任だったようで、会社を退社したあとも、奥さん共々上司のお世話をしたようで、いろんなご苦労があったことをのちにお聞きしました。そのときの経験から私の妻にはそんな思いはさせたくないと考えられたようです。年末に社長の奥さんが来られたとき、奥さんも社長とまったく同じ考えで、さっぱりしていて、我々にまったく余計な負担を与えない方でした。
こうしてイタリアでは、新たな上司を迎え、ドイツとはまた違うかたちで仕事も生活もスタートしました。日本人が固まることもなく(会社では社長と二人だけなので固まりようがありませんが)、人生の達人のイタリア人に囲まれ、私はエスプレッソだけでなく、イタリア人の考えにしだいに染まっていったように思います。ドイツでの家族もしっかり面倒をみるという方針、イタリアでの適度な距離感をもってプライベートを過ごすという方針、いずれも我々にはありがたいものでした。イタリアでは、長男がまだ2歳、次男は生まれたばかりという状況でしたので、社長の考えはことに当時の我々の状況に合っていたと思います。もちろんたまにお食事を共にするなどあり、楽しい時間を社長のご家族とも過ごしました。
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