第11回 “What is your idea ?” ~市場シェアの意味~
- グローバルの窓(海外体験記)
これまでプリンター事業、ディスクドライブ事業のことを書いてきましたが、ドイツでは通信系のオフィス機器としてファクシミリも販売していました。但し、シェアは数パーセントしかなく、赤字事業でした。ファクシミリもディーラー販売によるチャネルビジネスでしたが、プリンターのディーラーとはほとんど重複せず、相乗効果は期待できませんでした。したがい、営業部隊の人数は少なく、NECドイチュラント社の事業の中では弱小でした。
プリンター事業は30%のシェアでしたから、プロモーションや価格施策はおもしろいように当たり、常に我々が市場をリードしていましたが、ファクシミリは競合他社の後塵を拝し、プロモーションを打ってもあまり効果が出ませんでした。この2つの事業をやっていて、つくづく市場シェアの重みというものを学びました。
私の中での市場シェアの感覚は次のようなものです。5%のシェアを取ってはじめて市場から認知されます。それでも強風が吹けばすぐに吹っ飛びます。10%のシェアを取るとそれなりに市場に対して発言権が得られます。20%のシェアになると市場をリードできます、30%のシェアともなると市場を完全に牽引でき、他社はこちらの動きをみてアクションを起こしてくるという感じになります。だから、30%のシェアのプリンター事業では、営業部隊と次々に斬新なアイデアを打ち出し、販売を促進することができました。ところが、ファクシミリ事業はプロモーションがなかなかうまくいきません。
あるとき、ファクシミリのディーラーミーティングでディーラーと直接話をする機会がありました。そのディーラーは他社のファクシミリをたくさん売っている有力なディーターでしたので、「どのようなプロモーションが有効と思うか?」と聞いてみました。するとそのディーラーから「それはNECが考えることだ。こちらはそれにしたがい売るだけ。逆にお前のアイデアはないのか?」と切り返されました。このとき言われた“What is your idea ?”のフレーズは強烈に残りました。言われてみればそのとおです。海外では、ミーティングにしてもディスカッションにしても自分のアイデアを持って臨まないと相手にされません。日本では上司任せで済んだり、なんとなく部門で悩んだりして済んでいましたが、海外では個人に比重がかかってくるのだと痛感しました。まして私は二十代とはいえ、マネジャーでしたのでなおさらです。マネジャーでアイデアがない、判断できない、というのは話にならないのです。
ファクシミリは、私にとってシェアの重みとともに常にアイデアをもって顧客や市場に対応していく重要性を痛感させられる事業でした。
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