ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

この一句

水吸うて水の上なる桜かな

水吸うて水の上なる桜かな

曽根毅

 とても端正な句です。水辺の桜が、あたかも水を吸い上げて、水の上に浮かぶように咲いているかのようです。桜は水そのものから立ち上がっている感じがします。実際には水面に桜の姿が映っているのでしょうが、どこか神秘的でボッチチェリの「ビーナスの誕生」をも連想させてくれ、「桜」が立ち上がってきます。

 素材としては、「水」と「桜」しかないのですが、そのシンプルさにかえって美を感じます。「水」と「桜」は一体化し、境界が消失しています。「桜」は水の化身のようでもあり、万物の命の循環性を感じさせてくれます。

 「桜」は俳句でさんざん読まれていますが、たった二つの素材で、シンプルに詠み上げたこの句をみると、現代においてもまだまだ「桜」には読む余地があるのだと驚かされます。「桜」という季語の奥深さを感じるとともに、「桜」の生命に迫った句だと思います。

 今年の桜は、この週末(3月28日頃)に満開が予想されています。  (2026.03.26 【33】)

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。