水吸うて水の上なる桜かな
曽根毅
とても端正な句です。水辺の桜が、あたかも水を吸い上げて、水の上に浮かぶように咲いているかのようです。桜は水そのものから立ち上がっている感じがします。実際には水面に桜の姿が映っているのでしょうが、どこか神秘的でボッチチェリの「ビーナスの誕生」をも連想させてくれ、「桜」が立ち上がってきます。
素材としては、「水」と「桜」しかないのですが、そのシンプルさにかえって美を感じます。「水」と「桜」は一体化し、境界が消失しています。「桜」は水の化身のようでもあり、万物の命の循環性を感じさせてくれます。
「桜」は俳句でさんざん読まれていますが、たった二つの素材で、シンプルに詠み上げたこの句をみると、現代においてもまだまだ「桜」には読む余地があるのだと驚かされます。「桜」という季語の奥深さを感じるとともに、「桜」の生命に迫った句だと思います。
今年の桜は、この週末(3月28日頃)に満開が予想されています。 (2026.03.26 【33】)