ことばのさすらい
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俳句エスプレッソ(14) ~季語の本意 撥ねてついた泥は「春泥」?~

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俳句エスプレッソ(14) ~季語の本意 撥ねてついた泥は「春泥」?~

 季語には「本意」があるとよく言われます。「本意」とは一体何なのでしょうか。

 季語には長い俳句の伝統の中で培ってきた意味、感情、イメージがあります。その季語が本来まとっている空気や感情や世界のことを「本意」といいます。たとえば、「春の雨」ですと、静か、やわらかい、しっとり、心をほどく、といったイメージが湧き立ちます。【この一句】コーナーで掲げた田中亜美さんの「君きつと照葉樹林春の雨」は本意を押さえて鑑賞すると言いようのない味わいが醸し出されます。

 「春泥」という季語は、歳時記によると「春のぬかるみ」のことです。大地にあるぬかるみの状態そのものが「春泥」なのです。歳時記のカテゴリーでは「地理」に属します。だから、跳ね上がってついた泥は、「春泥」の本意からは外れます。

 俳句を作る際に季語の「本意」を押さえることはとても大切です。「本意」に沿った句は王道で美しい句になり得ます。「本意」を少しずらした句は、新しさや驚きをもたらし得ます。「本意」を裏切った句は前衛的な印象を与えます。ただ、「本意」を裏切った場合、共感を呼び込むことはなかなか難しいかもしれません。

 いずれにせよ、季語の「本意」をしっかり理解することが大切だと思います。

 

 

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。