俳句の視点から(10) 「個人と組織」
- 俳句の視点から
ジャニーズの崩落、中居正弘の女性スキャンダルに端を発したフジテレビのガバナンス問題、最近では、東京大学の贈収賄や不正接待の問題など、大きな組織の崩壊が立て続けに発生しています。インターネットやSNS、AIの興隆がこれまでの社会規範や価値観を大きく変え、組織の活動やあり方に見直しを迫っています。
日本の組織は「共同体型組織」といわれ、メンバー同士の支え合いとともに自らが主体的に貢献し、責任を果たすことで成り立ってきました。また、ジャニーズやフジテレビのように、マスコミや業界といった組織の外側とのもたれ合いが「共同体型組織」を二重、三重に守ってきました。しかし、SNS等の普及により、もはや忖度は有効ではなくなり、手加減が許されなくなっています。これまでの延長線上の発想の改善では根本的な解決にならず、弥縫に終わってしまいます。
「共同体型組織」は構造的に「閉鎖性」「同質性」「個人の未分化」という特徴を有しているといいます。根底に助け合う精神を持つため、一丸となってまとまりやすいのです。うまく成長しているときはいいのですが、歯車が狂うと、進むべき方向がおかしくなり、軌道修正が効きづらくなります。同調圧力が働きやすくなり、共同体を守るため、個人の救済よりも組織の利害を優先するようになります。おかしいと思う人がいても、仲間うちの論理に逆らえず、「何もしない方が得」となるのです。
『日本型組織ドミノ崩壊はなぜ始まったか』(太田肇著、2025年刊)では、これからは、「個人」は自律的に働くことが望ましく、組織は個人に活躍できる場を提供することが望ましいと主張します。著者はそうした形態を個人側からみたら「自営型」、組織側からみたら「インフラ型」と呼びます。
俳句の「結社」も「共同体組織」です。作者でない人が句会に参加することはなく、俳句を詠む人だけの集まりという意味では「閉鎖性」があります。また、句会を繰り返していると似たような句風に陥ったり、結社内だけの基準がなんとなくできてしまい、「同質性」を生み出す可能性があります。ただ、個人の自発性から結社に参加している人がほとんどなので、「個人の未分化」という点は免れています。個人個人の活動、作品に軸足が置かれているため、企業などに比べ、組織べったりとはなりません。私はこの点が俳句という文芸のいいところだと思います。俳句ではもともと個人が「自営型」として自律していますので、既に「インフラ型組織」となり得ているのです。
個人が組織にべったり従属し、組織が個人を思いどおりに使うというような関係は、もはや限界にきています。個人が組織を選び、組織は個人に活動の場を提供する。個人と組織が対等な関係でありたいと思います。そのためには個人が自律的に考え、動くことが何よりも重要なのだと思います。俳句の「結社」は今後の日本型組織のあり方の参考になり得るかもしれません。
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