俳句エスプレッソ(5) ~なぜ「切れ」が重要なのか~
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俳句はたった十七音しかありませんので、散文のように意味を述べても片言、断片に終わってしまいます。したがい、「切れ」が重要になってきます。通常は上五か中七で切れます。一句は「上五」対「中七・下五」、あるいは「上五・中七」対「下五」と二つの部分に分かれます。両者は引きつけ合い、ときには反発し合います。そこに生まれる力こそが詩であるといえます。切ることによって、その断絶が大きな間を生み、飛躍を可能としています。
切れを生むためによく用いられるのが切字の「や」です。「夕月や脈うつ桃をてのひらに 伊藤通明」「火を焚くや白夜の森のバラライカ 有馬朗人」のように、テーマを提示したり、強調する役割を果たします。また、「春惜しむ深大寺蕎麦一すすり 皆吉爽雨」のように「や」でなくても上五で切ることもできます。
「金剛の露ひとつぶや石の上 川端茅舎」は中七を「や」で切っています。中七で切る場合でも、「おそるべき君等の乳房夏来る 西東三鬼」のように「や」を使わずに切ることもできます。この句の場合、結論を最後に示すことで句に安定感をもたらしています。
下五で切る場合ももちろんあります。この場合、「かな」「けり」の切字を用いることが多いです。「くれなゐの色を見てゐる寒さかな 細見綾子」「芥子咲けばまぬがれがたく病みにけり 松本たかし」」などです。断定、詠嘆、余情と言った表現効果があります。
他にも「鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし 三橋鷹女」「こんなにも床に散らばるおもちや春 矢野玲奈」のように、句の途中(中七の途中の「漕ぐべし」、下五の途中の「おもちや」)で切れる句もあります。
「や」「かな」「けり」のような切字は、強い「切れ」を生みますが、芭蕉は「きれ字に用る時は、四十八字皆切字なり。用ざる時は一字もきれ字なし」と述べています。俳句では、切字を用いればいいということではなく、「切れ」を意識することが重要だといえます。
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