ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

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俳句エスプレッソ(3) ~俳句にとって写生とは~

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俳句エスプレッソ(3) ~俳句にとって写生とは~

 俳句に「写生」という概念を持ち込んだのは正岡子規です。子規は、当時の月並俳句を打破し、俳句の革新をめざしましたが、そのときに注目した手法が絵画の「写生」でした。目に映ったままを言葉にすることでものの存在感、生命感を表現しました。

 そのあと、主観、客観が問題視され、高浜虚子が「客観写生」を唱えました。主観を排して見えてくるものを詠む、ということで、より即物的に対象を描写する方法として広く受け入れられました。ただ、言葉を選ぶ段階ですでに作者の主観が反映される点は認識しておく必要があります。

 虚子の「客観写生」はさらにひとつの俳句観として「花鳥諷詠論」へと展開しました。俳句は、四季の変遷により起こりくる天然人事の現象を詠う詩である、ということです。

 俳句の手法として子規が唱えた「写生」は虚子により「客観写生」、さらに「花鳥諷詠」という俳句観にまで深化しました。こうした経緯を踏まえると、「写生」は、主観、客観の濃淡はあれ、俳句の世界観を表現し得る有力な手法といえます。今後、この流れをどう深化させていくか。それは、社会の動向と絡みあいながら我々が切り拓いていくのだと思います。

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。