ことばのさすらい
~「俳句」と「異文化」による出会い~

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俳句エスプレッソ(2) ~季重なりはいけないか~

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俳句エスプレッソ(2) ~季重なりはいけないか~

 一句の中に季語が2つ、もしくはそれ以上入っていることを「季重なり」といいます。俳句は基本的に一句に季語は1つが望ましいと言われます。「季重なり」は駄目というわけではありませんが、一句としてまとまりが悪くなります。「季語がなぜ必要か」のところで書きましたが、季語は強いコンテクスト(前後の文脈・背景)を持った言葉ですので、2つあると互いに喧嘩して焦点が定まらず、句としての力が分散するから、というのが私の考えです。季語同士が食い合うのです。たった十七音しかありませんので、焦点を絞った方が作者の言いたいことが伝わります。

 「遠山に日の当たりたる枯野かな 高浜虚子」の句は、枯野に焦点が当たっています、この句の季語は「枯野」だけです。一句の中で「枯野」に比重がかかり、作者の言いたいことが明白です。

 但し、「季重なり」でも成立している句はあります。たとえば、「啓蟄の土著けて蟻闘へり 鷹羽狩行」。「啓蟄」が春、「蟻」が夏の季語で季重なりですが、ここでは「蟻」の季節感は薄く、素材として扱われています。つまり、一句の比重は「啓蟄」にあるため、季語同士は喧嘩しないのです。

 

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。