第28回 “Work hard in Asian Business Division!”(アジアで暴れてくれ)
- グローバルの窓(海外体験記)
イタリアでの勤務を終え帰国しましたが、日本での帰任先は、海外事業計画部というスタッフ部門でした。「スタッフ部門は絶対嫌です」とイタリア会社の社長には言っていたのですが、当時の古巣の欧州部は主任がたくさんいて(私は主任として帰任)、戻る席がなかったようです。社長からは、「計画部の経験もしておくと何かの役に立つはず」と言われましたが、実際その通りでした。わずか1年半の勤務でしたが、海外事業計画部で勤務した期間中に、仕分けや財務諸表をほぼマスターしました。このお蔭で今でも損益計算書やバランスシートの数字はすっと入ってきて、その会社の状況や課題がわかります。バランスシートについては、百分率で推移を見ると一層会社の状況が見えてきますね。
さて、イタリアから帰国して最初の半年ほどは大いに苦しみました。イタリアへの恋病です。テレビを見ていて、イタリアの景色が出てくるともう駄目です。シエナの街並みが現れようものなら完全にノックアウト!イタリアには素敵な風景、料理、ワイン、サッカー、ファッション、オペラと何でもあります。まさかこんなにもイタリアに恋い焦がれることになるとは思ってもみませんでした。2年3か月と決して長い時間ではなかったのですが、私の体内のいたるところにイタリアのエキスが充満していました。
第26回、27回で書きましたGMの不正の件は、その後、イタリア会社がGMを解雇、訴訟となりました。負けはしなかったものの完全勝利には至りませんでした。実はこのような不正は、海外の現地法人では大なり小なり起こっていました。広告会社のみならず物流会社や旅行代理店といった業者と結託してキックバックをもらうというパターンでした。私がいたドイツ会社でもGMクラスが業者からキックバックをもらっていることが判明し、解雇されたと聞きました。海外ビジネスの場合、日本人はどうしても現地のコア人材を信頼して任せることになりますが、任せっきりにしてしまうと必ずといっていいほどこの種の問題が生じます。海外で組織や人をマネジするときに何よりも留意すべきポイントだと思います。
海外事業計画部では、引き続きイタリア会社やドイツ会社といった欧州法人を担当しました。業務は財務諸表をチェックしたり、予算と実績の管理を行ったりする仕事でした。日本にいると数字だけ見ていてもピンとこないのですが、私の場合はついさっきまで勤務していた現地法人ですので、なんで売上が落ちたか等は感覚的にわかります。そういう意味ではラッキーでした。現地経験のない人が数字だけを追いかけて、「何で在庫過多になったのか」と事業部長に聞かれるのですが、現地に聞かないとわからないので、彼らは電話やファックスで現地に問い合わせます。自分が主体で動けないので、しんどいですね。
私もよく聞かれましたが、いちいち現地に問い合わせても現地の仕事の邪魔をすることになりますので、聞かないでも大体こんなもんだろうと想像がつく場合は、「モトローラが価格を下げたので販売が鈍りました」とか、「エリクソンが新商品を投入したので苦戦しています」とか適当に言い、「でもイタリア会社はこういう手を打っていますから大丈夫です」と言い切ります。すると事業部長は「お前は見てきたようなことを言うな。イタリア会社からいくらもらっているんだ」とよく冗談で言われました。私はそんなことをいちいち日本側で根掘り葉掘り調べることにあまり意味がないと思ったのです。どう対処するかは現場の仕事で、そのために現地法人があるんだと思っていたからです。管理という仕事は私の性に合わなかったのだと思います。やはり現場が好きなんです。
結局、課長になることが決まり、たった1年半で海外事業計画部からアジア事業部に異動となりました。事業部長に言われた言葉は今でも忘れません。「お前はやっぱりスタッフよりラインでやった方がいい。スタッフは似合わん。アジアで暴れてくれ」と。
やったー!と思いました。
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