俳句の視点から(13) 「多様性の意味 ~視点の幅~」
- 俳句の視点から
社会にイノベーションが求められる中、「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion」が叫ばれて久しくなりました。この「DE&I」の意図するところは、単なる多様性を設けるだけでは不十分で、そこに「公平性(Equity)」と「包摂性(Inclusion)」がないと「多様性(Diversity)」は活かせないという点にあります。
「公平性」は個人の異なる状況を考慮し、必要な支援や資源を提供することです。すべての人を同じ基準で扱う「平等」とは違うことをよく認識する必要があります。「包摂性」は多様な人々や価値観を受け入れ、誰もが参加、活躍できる状態を意味します。国籍、ジェンダー、年齢など多様な人々をただ寄せ集めただけでは意味がありません。
今回は、『多様性の科学』(マシュー・サイド著、2021年刊)を踏まえ、「CIAがなぜ同時多発テロを防げなかったか」を「多様性」の観点からみてみます。
CIAはアメリカの対外情報機関で、1947年の創設以来、国家安全のため厳格な人事採用基準で人材を採用しています。9.11(同時多発テロ)当時、採用された人材は、白人、アングロサクソン、プロテスタント、男性がほとんどで、非白人系や女性はほぼいなかったようです。イスラム系の人も残念ながらいませんでした。テロから国家を守るには、分析や諜報活動を行う極めて有能な人員が欠かせないとの考えから、多様性より有能性を重視した人事政策を行っていました。
当時、イスラム世界のあちこちで危険な警告の芽はありましたが、CIAはアルカイダの危険性を過小評価していました。調査は十分足りていたのですが、情報の点と点をつなげることができなかったのです。みな同じ枠組で見ていたからでした。視点が画一的だと幅が広がらず、盲点に陥ります。逆に視点が多様化すればするほど、有益な解決策の幅が広がります。ここに「多様性」の意味があります。
俳句の句会も同じような考え方の人が集まると似たような句が出てきます。吟行句会などはその傾向が一層強くなる恐れがあります。俳句の結社では、それでも比較的多様性があるかもしれませんが、ジェンダー、年齢、環境などに偏りがあると句は広がりません。仕事では幅広い解決策が求められる一方、俳句では幅広い作品が活性化につながります。価値観や視点の幅が広がることで句への着眼、表現、リズムが多様になるからです。
「多様性」はものごとを活性化するために必要な要素だと思います。イノベーションはそうした活性化から生まれてくると確信しています。
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