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~「俳句」と「異文化」による出会い~

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エッセンス 【グローバルの窓】(7) ~ビジネスには正念場がある~

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エッセンス 【グローバルの窓】(7) ~ビジネスには正念場がある~

 「6月12日の14時から16時のまったく同じタイミングに、ドイツとイタリアの大手のお客さんが我々を訪問する事態となりました!どうしましょうか?」

 私は日程調整を何度も試みましたが、両社とも来日スケジュールがびっしり詰まっていて、変更できない状況にありました。受注も入り出し、ビジネスがいい調子で進んでいたので、どちらかを断ろうかと一瞬思いました。しかし、どちらも国を代表する企業です。困った私は、上司の課長に相談してみました。それが冒頭の質問です。

 課長はしばらく考えたあと、私にこう言いました。「よし、わかった。お客様は両方とも大事だがら、二手に分けて対応しよう。イタリアは俺がやるからドイツは仲君がやってくれ。同じように、ディスクドライブ事業部のみなさんにも協力してもらい、二手に分かれてもらおう」

 それぞれの対応グループをリードするのは、課長と私です。入社4年目の私が事業部の部長や課長をリードできるか不安はありました。しかし、一か月ほど前に居酒屋で決起集会を開き(単なる飲み会ですが)、「100億円をめざすぞ!」とみなで息巻き、目標を共有していたことが大きかったと思います。「2手に分けるほどリソースないよ」といったネガティブなコメントは一切なく、事業部も全面協力してくれました。

 課長のおもいきった決断は鮮やかでした。課長がプレゼンテーションの最後にいつも示した「NEC Tree」の絵を思い出します。太陽はお客様、木はNECです。木は太陽の光を浴びて育つのです。

 ”The tree is growing up together with  the sun.”と言って、私はプレゼンテーションを締めくくりました。きっと課長もイタリアのお客様に同じ言葉で締めくくったにちがいありません。

 あの日、どちらかのお客様を断っていれば、ビジネスの勢いは弱まったでしょう。ビジネスには正念場があります。あのときがまさにその正念場だったのだと思います。  【第7話ご参照】

筆者紹介

仲 栄司

Eiji Naka

大学でドイツ語を学び、1982年、日本電気(株)に入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国。
趣味は俳句。『ダリの時計』(句集)、『墓碑はるかなり』(評論)を上梓。
座右の銘は「南国のしあはせバナナあれば足る」
東南アジアの「空気感」が大好きです。